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昭和が香る狸小路で居酒屋寄席 はな家寄席39 雷門音助 独演会 [落語]

この日は横浜は西口にある狸小路へ出かけました
この狸小路にある居酒屋さん(おでん屋さん)”はな家”ではひと月おきに落語会が開催されるのです

 

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いつも通りに菊名駅の駅蕎麦(しぶ蕎麦)で腹ごしらえしてから横浜西口へ

やってきたのは昭和が香る狸小路 

 

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13時半開場
壁にもたれながら聴けるように壁際の席をGETしないといけません
なので何時も開場ダッシュ
この日もポールポジションGET
好きな席に陣取ります

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この日は雷門音助さんの 独演会 

<目黒の秋刀魚>

 

御大名も初代は英雄武人であったが、代を重ねるに従ってその必要はなくなった

子供がそのまま大人になったようなタイプが理想とされた

大名行列でも江戸市中では「したにぃ~、下に」とは声が掛からなかった

そんなことしてたら、都市の活動が滞ってしまいます

そこで「よろ~、寄ろう」と声が掛かり、土下座をせずに脇に避けてれば良かった

「誰だい?そうか○○様か 道理で素晴らしい行列だ」

「今度は何処のお姫様だい?綺麗だな~ ああいうの買いたいなぁ」

「お前なんか何でも買いたがるが、淫売でも買え」

その様な悪い言葉は姫の耳にも届い

周りの者に聞いたが答えられず「下々の下品な言葉で『休め、休息いたせ』の意味でございます」と逃げた

国元から老家老が挨拶に来た

挨拶終わって姫様は労いの言葉をかけた「ご苦労であった。次に下がって淫売でも買え」

大名は贅沢していたかというと、質素な食べ物で、冷めたものしか食べられなかった

文献を紐解きますと、意外と不自由な生活をしていらっしゃるんですね

魚ひとつとっても、鯖やマグロなんてのは下魚と言いまして、けしてお大名は食べなかったようです

むしろ、魚といえば鯛

鯛しか食べられなかったってぇんですから、不自由ですね

鯛だって生きのいいのが刺身か何かで食べられれば幸せですが、そうはいかない

万が一でも当たってはいけないということで、蒸したり焼いたします

しかも、まずはそれを、お毒味役が食べる

食べて、問題がないとなると、お殿様が食べられるのですが、其の頃にはもはや焼き魚は冷えきっている、と

まぁ、そりゃあ美味しくはないですよね、いくら鯛でも

腐っても鯛と言いますが、冷めても鯛とは言いません

 

ある味の分かる大名が「今日の菜は昨日より劣るがどうしたのか」

「昨日は三河島産ですが、本日は庭園で採れたものです」

「なぜ、三河島のものが良いのだ」

「それは下肥を使っているからです」

「下肥を掛けると旨くなるのか。くるしゅうない、これへ掛けて参れ」と茶碗を差し出したとか

 

お付きの金也は「天気もいいし、武芸錬成のため遠乗りなどいかがでしょうか 下屋敷から近い目黒など、谷あり川あり、紅葉も綺麗です」と勧めた

「あい分かった 遠乗りに出かけるぞ 支度をいたせ」

で、お殿様一人馬で駆け出した

驚いたのは家来

そんな事は思いも寄らなかったので、慌てて後を追った

 

ところが、馬の鞍は木で出来ておりますから、下手に乗ると尻が痛いのなんの

目黒に着かないうちに、尻が痛くて馬になんか載っていられない

飛び降りまして尻を撫でていおりますと、ご家来衆が到着

「おまたせいたしました、殿、どうか、ご乗馬のほどを」

「あぁ、いや、うん、いや、しかし、その方たちに尋ねるが」

「はっ?」

「もし戦場で馬を失った場合、そなたたちは如何いたす?」

「はぁ、戦場で…それならば、徒歩にて戦います」

「よく言った。足は鍛えておかなければならぬな?」

「御意にございます」

「では、あそこの小高い丘を見よ 赤松が生えておるな では、あそこまで、その方共と徒歩にて競争じゃ 予に劣るな!はじめ!」

今度はかけっっこが始まります

駄々っ子だから仕方がない

殿様はいい気なもんで、馬をほっぽり出して丘へ一目散

とはいえ、殿様にかけだされてしまうと、家来たちは従うしか無い

自分のものと、お殿様の馬を、その辺に適当に括りつけまして、殿のあとを追いかけます

家来たちが丘に、息も絶え絶えにやってきますと、

「その方共は、やはり、予にはかなわんの」

これだから困ります

「はあ、空腹を覚えた 弁当を持ってまいれ」

「弁当?弁当?持って参ったか?誰か弁当を持って参ったものはいるか?」

当然誰も持ってきていない

「恐れ多くも申し上げます あまり火急の事のため、弁当を持参した者は1人もおりません。」

「弁当が……ない さ、さようか さようであるか」

どかーんとお腹が空いてきます

そこにご飯があると思うと人間てぇものは意外とお腹が空きませんが、何もないと知ると空きます

「なんでお前たちは弁当を持ってこないのだ」などと言うと、この中の誰かが責任をとって腹を切らなければなりません

「そういうことを言ってはなりませんよ」と、小さい時から聞いておりますから、殿様は文句も言えない

一気に全身に空腹感が充満してしまった

主従そろって松の根方に腰を下ろし、ぼ~っと秋の空を眺めていた

その時、近くの農家で秋刀魚を焼く匂いが、殿様の鼻に入った

「金也、この匂いは何だ?」

「恐らく近所の百姓家で焼いておるのでしょう さんまでございます」

「さんまとは何じゃ?」

「はっ、魚にございます」

「ほぅ、魚か では、食うてみるか」

「はっ、あれは下なる魚にて、高貴な方の口には合いません」

「だまれい、武士が好き嫌いをいって、戦が出来るか!目通り許す 秋刀魚とやらをこちらへ。」

どうしようもありませんから、ご家来は農家の家へ

「殿がさんまを食したいとおっしゃっておる どうじゃ、そのさんま、譲ってはくれんか」

と、小判を出した

お釣りは村中探したって無いと言う百姓に釣りはいらぬと言い

いきなり大金が入ったから百姓、嬉しくってしょうがない

縁の欠けたお皿に、丁寧に焼いたさんまの五・六本と、おろした大根おろし、すだちを添え、醤油をチューっとかけ、割り箸を添えて殿様に献上

それをみて驚いたのは殿様

いままで、魚というものは、今まで赤くって平べったくって冷たくてパサパサしたものだと思っていた

ところが、今目の前にあるのは細長くて真っ黒な魚

チュプチュプと脂がたぎっていて、まだその脂に火が燃えている

横っ腹には消し炭がついております。

「金也、これを食して、大事ないか?そうか、大丈夫だな?……大丈夫だな?」

いぶかしそうに食べ始めたが、旬のものだから不味い訳はないし、その上運動の後の空腹に青空の下だから美味いに決まっている

代わりをもて、代わりをもて、と物の怪のついたように食べます

「美味であった!美味であったぞ!その方たちには骨を取らせる」

「ありがとう存じます」

みんなは骨を食べて我慢をしまして

「いやー、か様に美味なるものがあるとは余は存じなかった これからは館へ帰り、三度三度とさんまを食すことにする」

「恐れ入りながら申し上げます ここでさんまを食したことは、何卒、ご内密に願います。」

「・・・・予がさんまを食すと、何かまずいのか?」

「家臣一同の不徳ということに相成ります」

「・・・・うむ、分かった 予は誰にも言わん そちらの迷惑になるようなことはせぬ」

ごきげん麗しく、お屋敷へ帰って参ります

帰って御膳につきますと、例の冷めた赤いのが出てまいります

それをみると

「あぁ、さんまは美味かった」と思う

毎回毎回、鯛が出てくる

世は太平、他に考えることがないから、寝ても覚めても「さんまは美味かった」

寝ては夢、起きては現か幻か

さんまに恋い焦がれます

 

御親類にお客様として呼ばれる事があった
この時、料理の中から好きなもの一点作らせていただきますからとの申し出があった

当然「秋刀魚」とリクエスト

聞いた方は解せなかった、殿様がゲス魚の秋刀魚を知っている訳がない

再度聞くと「黒き長やかな魚である」とのことで、日本橋まで早馬を使って買い出してきた

 

ところが、お料理方はこれをみて考えた

秋刀魚なんてのは雑に焼いて醤油とおろしとでキューっとやるのが美味い、美味いというのは分かっている

けれども、こんな脂の強いものを殿様に出して、万が一の事があっては我々にどんな罰が下るか分からない

とにかく、油を抜いちまおう、なんてことになりまして、さんまを蒸し器にかけてしまいます

さんまの脂を綺麗に落としてしまい、そこにあるのはバッサバサの秋刀魚

また、小骨がありますから、この小骨が喉に刺さっては大変だということになりますから、みんなで寄ってたかって毛抜で骨を抜きます

もうそうなるとさんまの方はクッタクタのバッサバサ

このまま出すわけにいかないってんで、お椀にしてお殿様の前に出します

 

殿様はチュプチュプしていて消し炭があるのが出てくると思っていますから、お椀を前にしてビックリ

「これ、即答を許す これは秋刀魚か?」

「はっ、秋刀魚にございます」

「左様か、こんな形であったかな」

お椀をとりますと、かすかにあの恋い焦がれたさんまの匂いがいたします

「おお、これじゃ、これじゃ 久しかったのぅ そちもけんごで何よりである」

ぱくぱく・・・ーー;)

「これ、これはどちらで仕入れた?」

「はっ、日本橋、魚河岸でございます」

「それはいかん、秋刀魚は目黒に限る」

(>▽<*)www

 

 

<松山鏡>

 

鏡のない国の連中が淺草見物の折り蔵前通りに出ると、大きな鏡やさんがあった

「ちょっと待て、ここに面白い店があるぞ

『か・か・み・せ』、嚊(かか)見せると書いてあるぞ」

その前に立つと自分たちの顔が写った。大変感心して、村に帰った

この話が大評判になって、翌年は大所帯で江戸に着いた。
「確かこの辺だったが・・・」

鏡やさんは引っ越して、その後に「琴三味線指南所」に変わっていた

「例年じゃなければ見られないぞ

ここに書いてある『ことしゃ みせん』(今年ゃ見せん)」

「家の嚊は病気だから待てるかな」、「大丈夫。『死なんじょ』と書いてある」

 

 越後新田松山村には鏡が無かった。ここに住む正直庄助は特に親孝行で、両親が亡くなって18年間墓参りを欠かさなかった

このことがお上に届き、村役人が庄助のところに出向き、褒美が出ることになったと伝えた

庄助は、両親の墓参りを毎日欠かさずしたのは当たり前のことで、お上から褒められ、褒美を貰うことではないと、金も田地田畑もいらないという

困った村役人がどんな無理難題でもかまわないから申してみろ、お上の威光で叶えてくれると言うと、どうしてもと言うならお上のご威光で「とっつぁまに夢でも良いから会わせてくんろ」と言う

これは無理というものであったが、何でも褒美をやると言った手前、お上も今更断れない

庄助は親に似ていることを確認して鏡を渡した

庄助が鏡を覗くとびっくり

そこには死んだはずの父親がいた

感激した庄助、鏡に向かい涙を流して話しかけた

 

お上は「他の人に見せるでないぞ」と言い、”子は親に似たるものをぞ亡き人の恋しきときは鏡をぞ見よ”と歌を添えて、鏡の入った箱を正助に下げ渡した
庄助はは鏡を大事に家に持ち帰り、けっして人に見せるなと言われたので、納屋の古つづらの中にしまって、毎日そっと行っては鏡を見て、父に朝夕のあいさつをしていた

 

これを女房のお光が何かあるのではないかと怪しみ、庄助の留守に納屋のつづらを開けてビックリ

そこには不細工な女の顔が

てっきり庄助が引っ張り込んだ女と思い、「われ、人の亭主取る面(つら)か!狸のような面しやがって」と泣きながら大騒ぎ

野良仕事から帰った庄助の胸倉をつかんで、「さあ、殺せ」の大げんかが始まった

たまたまそこを通りかかった尼寺の比丘尼(びくに)さん

あまりにひどい喧嘩に止めに入った

事情を訊くとお光は、つづらの中に女子(おなご)を隠していると言い、庄助はあれは父つぁまだという

尼さんは、「ようし、おらがそのあまっこに会ってようくいい聞かせるから」と、納屋に入り鏡を覗いた

「庄さんよ、おみつよ、あんまり二人が派手に喧嘩するもんで、中の女が気まり悪いって坊主になった」

ヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆

 

 

ここで中入り
中入りの後はもう一席

 

 

<不動坊>

 

噺家や講釈師など芸人のことを昔は「遊芸稼人」と言ったさそうです

それがある時期から「技芸士」と名前が変わりました

それと同時に鑑札が貰えるようになったとか

鑑札が無かったら営業ができなかったそうです

「遊芸稼人」から「技芸士」に名前が変わって税金が倍になったそうで

今も昔もお上のやることには、変わりはございません

 

「利吉さん、いてるか?」と、大家さんがやってきた

「これは大家さん、わざわざこんな汚いとこへ来てもぉて・・・」

「これ、そぉ「汚い汚い」言ぃないな こらわしのうちやがな」

「違いおまへん で、何ぞご用で?」

大家は利吉が働き者で、いつ来てみても手を遊ばしてるといことがないことを褒める

この長屋には寡が四人いてるが、利吉以外の三人は働きもせず考えることは遊ぶことばかりロクなやつが一人もいないとぼやく

「おまはんはコツコツ仕事をして貯めた金を、近頃ではあっちゃこっちゃへ融通してるそぉななぁ それも高い利ぃを取らんと 助かってる人が大勢あるっちゅう話やが だいぶに残したんやろ? 貯めたんやろ? 隠さんでもえぇがな、誰も貸せっちゅうんやないがな しかし人間といぅものは金ができたさかいそれでえぇといぅもんでもない 持つもん持たんことには世間が馬鹿にしよる でや、このあたりで嫁を取る気はないか?」

「親戚や知り合いからもちょいちょい言われまんねんけど、死んだ親父が言ぅてました「嫁とお仏壇は持ち急ぎするもんやない」気に入らんさかいちゅうて、ちょいちょい取り替える訳にいきまへんさかいなぁ」と利吉

(落語の途中ですが、さる1号、この部分を聴きながらそりゃ違うと・・・ 嫁を持ち急ぎはしなかったけれど取り替えたいーー;)

 

おしゃべりで口の軽い女は嫌だという利吉さんに大家は自分が世話をしようという女ごだから間違いはないという

しかも長屋の女だという

「この長屋の女はみな、ドしゃべりばっかりでっせ  もの言わず・・・戸口の糊屋のお婆(ば)んでっか? 殺生ょ~やがな、あれ七十二ぃや」

「誰がお婆さんを世話しょ~ちゅうねん お前もよぉ知ってる不動坊火焔の女房、お滝さんや」

「帰っとくなはれ そぉでっしゃないか、朝からヤモメなぶりに来んといとくなはれ あんた今言ぃなはったやろ「不動坊火焔の女房お滝」お滝さんには不動坊火焔といぅ亭主がいてまっしゃないか」

その不動坊火焔は講釈師なのだが、大家が言うには九州に巡業に出かけ、帰りにもう一儲けと山陰筋を細く巡業しながら帰り道についたが、これが広島の宿では散々の不入り、持ち金も無くなりどうにもこうにも動きが取れなくなってしまった時に弱り目に祟り目といやつで流行病を患らってコロッと死んでしまった

死骸は宿屋の方で片付けて、宿銭に医者代に葬式代三十五円といぅ借金ができたと

 

「お滝さんがわしのところへ相談に来て言ぅのには、腐っても芸人の端くれでおます 箪笥の中に衣装の三枚や五枚はおます その着物と道具を売り払ろたかて三十や五十の金はできますが、それを返してしもたんではあと裸で暮らさんならん まだわたしも老い朽ちた身やなし、三十五円のお金を結納代わりに誰ぞもろてくれる人があったら、どこぞへ縁付きたい」と、こない言ぅね 相手はお滝さんや、もらう気ぃあるか?」

「お滝さん・・・、ありがたいなぁ お滝さんやったらず~ッと前から惚れてたんや

お滝さんね あれ、俺のかみさんなんですよ あんまり綺麗でくやしいから、今はちょっと不動坊に貸してやってるんだーって、思ってて だから、お滝さんホントは俺のかみさんなんですよ!」(なんだか一歩間違えるとストーカーのような:さる1号談)

 

「人の女房にず~ッと前から惚れたりしたらややこしぃで・・・・借金の三十五円も出したってくれるか?」

「お滝さんは俺のかみさんなんですから、借金も一緒にもらいますよ むしろ、働き甲斐があるってもんだ!」(男前だねぇ:さる1号談)

そんな訳で大家はこの縁談を進めることにした

喜ぶ利吉、いっそのことお滝さんに今夜から来てもらいたいと言う

大家は猫の子もらうようなわけとは違うと言うものの、根負け

お滝さんが良いと言えば連れてくると言ってくれた

「そぉなるとお前、今晩花婿やで、風呂に入って綺麗にしなきゃいけない

そこらも綺麗ぇに掃除して「乞食も身祝い」ちゅうことがあるさかい、尾頭の付いたんと酸い酒の一合も用意しときなはれ 今夜連れてくるさかいあんじょ~しときや」

大家はお滝さんのところに向かった

残された利吉さん、風呂に行くことにしたが、舞い上がってしまいやることが無茶苦茶

風呂行くのに鉄瓶下げて出ようとしたり、戸締りに内らからカンヌキ掛けて出られなくなってしまったり

でもなんとか風呂屋に行った

湯船の中でも舞い上がっている利吉さん

 

「お滝さん来たら、どない呼んだろかいなぁ・・・おい、お滝「まぁ、今まで朝晩お滝さんちゅうてて、自分の女房になったとたんにお滝、こんな薄情な人やとは思わなんだわ」てなことになったら具合悪いし、どない言ぅたろかいなぁ

お滝さん、縁あって今夜こぉしてうちへ来てもらいましたけど、不動坊の先生さえ生きててくれはったら、こんなとこへ嫁入りして来んでもえぇもんを

それもわずか三十五円といぅ金のために、嫌な男に身を任さんならんとは、ホンに金が敵の世の中やなぁ と思たはりまっしゃろなぁ けど、それではちょっと水臭いやないか そぉでっしゃろ、おい、お滝!」

 

大きな声で独り言、周りから気味悪がられる

終いには芝居がかってしまいお滝さん役で女形にもなって熱演

 

「そりゃわたしじゃとて、不動坊火焔といぅ遊芸稼ぎ人を亭主に持っておりますと、上ベは派手なよぉでも、夏は夏がれ冬は冬がれ、芸人の息するときはわずかしかありゃいたしまへん 同じ所帯の苦労するのなら、いっそ堅気のお方と苦労がしてみたいと思ぉとりましたが、利吉っつぁん、この長屋にはあんたを入れてヤモメが四ったりいたはりますが、あんたを除けたほかの三人はロクな人が一人もいたはりゃしまへん

漉き直し屋の徳さんはワニ皮の瓢箪みたいな顔したはります カモジ鹿の子活け洗いの裕さんは鹿の子の裏みたいな顔で、東西屋の新さんは商売柄とはいぃながら、大きな太鼓を腹へ掛けて町中をドンガン・ドンガン歩いたはりますけど、家ん中はヒ~フル・ヒ~フル節季の払いもさっぱり、泥海ちゃんぽんでおますわいな

そこへくると利吉っつぁん、あんたはお金があって男前で程がよぉて親切で、ホンに女ごと産まれたからは、こんな殿御と添いぶしのぉ、身は姫御前のォ~♪」

 

「おいおい見なされ この人湯の中で浄瑠璃やってまっせ」

 

「日ごろ念じた甲斐あって、今宵こぉして来たからは、あんたに任した体じゃもの、どぉなと信濃の善光寺さんは、こないだから阿弥陀池でご開帳があったやないかいなぁ~」ドッボ~~ン!

 

「はまってますわ、ちょっと上げたげなはれ」

 

大騒ぎの後、利吉さんは帰っていった

この熱演を湯船の隅で見ていたのが徳さん

もう怒ったの怒らんの 体も拭かんとそのまま帰ってまいりますと、ヤモメ連中呼び集めます

 

「今、風呂行てたらな、風呂の中で一人で泣いたり笑ろたりしてるケッタイな男がおるねん よぉ見たら金貸しの利吉やぬかしてること聞ぃたらアイツ不動坊火焔とこのお滝さんな、後家になったろ で、大家の勧めであいつとに嫁に行くそうだ 腹たつやろ しかもな、アイツ風呂の中で俺たちの悪口も言いよったんや この長屋にはあいつを入れてヤモメが四ったりいてる、あいつ除けたほかの三人はロクなやつが一人もいよらん 漉き直し屋の徳の顔はワニ皮の瓢箪や お前らのこともこんなふうに言っとったで・・・・・」と、徳さん

悪口に腹を立てた三人、密かに狙っていたお滝さんを取られた嫉妬もあってあだ討ちをすることにした

 

俺に思惑がある、と徳さん

「不動坊火焔が死んでまだ四十九日も経たんうちによそへ嫁に行くやっちゃ、行くほぉももらうほぉもあんまりえぇ気やないわい そこを付け込んで、今夜不動坊の幽霊を出したろと思うねん 「わしが死んですぐによそへ嫁入りとはあんまり胴欲な、それが恨めしぃて浮かべん 二人とも髪下ろして坊主になれ」って言って頭をクルクルッと丸めさして、明くる朝、その坊主頭見てみなして笑おっちゅうのんどや? 幽霊役は誰がやるかって? この裏に軽田道斎といぅ不動坊と同商売の講釈師が住んでよんねんけど、こいつが不動坊が旅してるあいだにお滝さん口説いてボ~ンと弾かれてるムカつきがここにあるさかい、これ、煽ったったらきっとやりよる 新さん、すまんけど太鼓持ってきてんか 幽霊出るときドロドロドロと叩いてくれ それから、裕さん、幽霊火をたきたいと思うんでアルコール買ぉてきてんか あとはわしがあんじょ~するさかい、頼んだで」

 

悪い相談といぅものはすぐまとまりますもんで、日が暮れになりますとみな集まって来てた

寒い夜で白いものもちらちらと降ってくる

このまま本降りになりそうな気配だ

寒い中、皆利吉の家の屋根に登った 中の様子を伺うと利吉とお滝さんが仲良く話をしていて悔しさ倍増

 

「先生(講釈師のこと)、ここにサラシがおまんねんけど、サラシって言っても手頃なのが無かったから褌繋いだサラシですから丈夫でおます これで胴くくりさしてもらいますわ そこが天窓でっしゃろ、そっからず~ッとぶら下がって降りてもらいます・・・・しっかり結びましたぜ 丈夫なもんだす ほな、下ろしまっせ・・・・ヨットセェ」

「裕公、幽霊火持ってこい、アルコールのことや ん? なんや蓋もせんと こんなもんフタしとかんと気ぃ抜けてしまうやない ん? 出ぇへんなぁ?」

どこで買ぉてきたんやと訊くと角の饅頭屋で買ったと言う

アルコールと聞いてアンコロと間違えたらしい

「アルコールとアンコロを間違うか? ほんでまた、どこぞの世界にビン持ってアンコロ買いに行くやついてる?」

「饅頭屋のおっさんも言ぅてたわ「詰めにくい」

「当たり前や このボケ、カス、ヒョウタン」

「そらわいはアホじゃ、アホやさかいこの雪降るのんに他人の家の屋根上がって、こんなことしてるんやないか お前もあんまりカシコ無いぞ、お前がアホかわいがアホか利吉起こして聞くか?」

と、屋根の上で大騒ぎ

たまらないのが宙ぶらりんな講釈師、この体、上げるか下げるかどっちかしてもらわんと、サラシが腹に食い込で・・・と訴える

幽霊火は諦めて太鼓をドロドロドロと叩き幽霊を下げていった

 

「うらめしぃ~、迷ぉて出たぁ~ 不動坊火焔の幽霊じゃぁ わしが死んですぐによそへ嫁入りとはあんまり胴欲な それが恨めしゅ~て浮かべん 二人とも髪を下ろして坊主になれ~」

その声を聞いて様子を見にきた利吉さん

「ほぉ、あんた不動坊の幽霊でっか けどわたしら恨まれるよぉなことした覚えおまへんねや そぉでっしゃないか、そらあんたが生きてる間にわたしとお滝さんがおかしな仲になったちゅうんなら話は別や あんたが死んだあとでちゃ~んとした仲人を立ててもぉた嫁はんですわ 

それにや、おまはんが残した三十五円といぅ借金は、いったい誰が払ろたと思てんねん?」

「えっ?そんなん聞ぃとりまへんので・・・すんまへん 恨めしぃ~」

「ケッタイな幽霊やなぁ お前も十万億土ちゅう遠いとこからやって来て素手で帰るわけにいかんやろ、折角来たんやさかい十円持って退散しなはれ」

「十円……? 十円では恨めしぃ」

「幽霊が駆け引きすな ほなもぉ十円足そ、二十円で手ぇ打ち」

「二十円!上に三人、わしを入れて四人、ひとり頭五円・・・手ぇ打たしてもらいます 幾久しゅ~お睦まじゅ~♪ 四海浪静かぁにぃ~」

 

何やようわからんが二十円で手ぇ打ってきよったで 引き上げたれ、引き上げたれ・・・と幽霊を引き上げる屋根の上の三人

下ろししなはそっと下ろしたんで良かったんですが、グ~ッと上げたものですからサラシの結び目が天窓の隅へ引っかかってブツッ!

幽霊そのまま下へドス~ン! 屋根の上の三人、屋根から落ちて往来へゴロゴロゴロ~ッ!

「お滝さん、恐がることおまへん 向こぉのほぉで「痛たぁ、う~ん」言いよった あんなこと言ぅ幽霊があるやろか、わたい見てきまっさかい灯りかしとくなはれ・・・コラッ、誰や」

「本日はお日柄もよろしく・・・」と幽霊

「何ぬかしとるねん。何もんやお前?」

「隣り裏に住んでおります軽田道斎といぅ講釈師で」

「講釈師? 講釈師が幽霊の真似して金取ったりするのんか?」

 

「へぇ、幽霊稼ぎ人でおます」 

(>▽<*)www

 

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寄席の後は懇親会、会場だった二階席は元の居酒屋レイアウトに
まずはドリンクを選びます 
やっぱり最初はビールかな
喉が渇いているし

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* ̄0 ̄*)ノ口 乾杯
喉が渇いていたようでめっちゃ美味しい

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でも寒いからビールは一杯だけ
あとはひたすら熱燗をいただきます

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熱燗を飲み続けてちょっと心配でしたが、無事乗り過ごしなしで帰着^^¥


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今週は大阪出張

そしてしっかりと来月の大阪出張を仕込んできました

大阪出張も何気に赤字出張w

詳細は後日

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